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 気  持  ち 



何時もの様に、その華奢な身体を自分の方に引き寄せて、
腕の中に収めて強く抱き締めると、
もう慣れているハズだろうにも関わらず、
その瞬間はまるで、初めての時の様に緊張で身を堅くする。
そのまま何もせず少し時間を置くと、その身体から少しづつ緊張が取れ、
少しだけ…ほんの少しだけ身体の重心を胸に預けて、
戸惑うかの様に、オズオズと腕を上げ、抱き締めている腕に、
指を触れて来る…。

本当は…
もっとしっかりと縋る様にその指を、手を、腕を背中にまわして欲しいと思う時が、
無いわけでも無い…
でもその、
何時もと変わらない、実に君『らしい』反応が可愛くて、
何時までも慣れない仕草が、何かしらの感情を呼び覚ますかの様な気にさせて、
敢えて、それ以上の事は望まなかった…。

髪に触れ、
顔を上げる様に促がして、その唇に軽く触れる。

「…ぁ…」

唇が離れる瞬間、吐息と共に小さく洩れる声。
それがまるで、もっと触れて欲しいと言っているかの様で、
誘われるままもう1度触れ、今度はそのまま深く口付ける…。

「ん…っ…」

口付けが深くなっていくに従って、
身体に震えが走り、それを抑え様とでもするかの様に、
腕に触れている指先に力が入っていくのが解かる。
多分、今君は、

――― 何時もの様に ―――

足の力が抜けてしまいそうになるのを、必死に我慢しているのだろう。
などと思いながら、軽くその身体を背中から支える。
支えながら、その背中に軽く指を這わすと、
震えが大きくなったのが伝わってくる。

「…っ、ゃ…んぅ」

息を継ぐ合間に、
その事に対する抗議らしき喘ぎが微かに紡がれるのを聞きながら、
柔らかく甘い唇を味わう。

今この瞬間。
この腕の中に居る君は、確かに僕のモノなのだ。
それが、自分の勝手な思い過ごしでも何でもいい、

手に入らないモノだと思った。
手に入らないから壊そうと思った。
自分のモノにならないのなら…
誰か他人の手に渡ってしまうくらいなら…
いっそ―――
君が君でなくなってしまっても、
例えその瞳に浮かぶ感情がどんなモノであったとしても、

『僕』を見てくれるのなら…
『僕』を他の誰とも違う特別な存在として見てくれるのなら…

そう…思っていた…。



――――――――――――――――――――――――――――――――

何も考えられなく成ってしまいそうな程長い口付け。
解放されても頭がボウっとして、
何も考えられなくて、
抱き締められるまま、その腕に少しだけ身を任せて、

少しの沈黙…この瞬間が少し好きだった。

こういう行為自体は、何度経験しても慣れなくて、
何時でも、色んな感情が一度に入り混じって、
頭が混乱してしまいそうになるのを必死に押さえても、
それでも、『逃げ出したい』と思う時が無いわけじゃない。

――― でも ―――

それじゃあ何故僕はココに来るのだろう…
逃げてもいいのに。
逃げてしまってもいい『ハズ』なのに…。

――― 何故?―――

僕の気持ちはこんなにも不安定なのに。
君が僕に触れれば触れる程、どんどん『不安』になるのに。
こんなにも『苦しく』なるのに…

――― 解からない… ―――

こんな自分が好きじゃない。

君にとって、僕はどんな存在なのだろう…

僕にとって君は?

――― 漠然とした不安 ―――

このままでいる事…

きっと…

僕は、

僕は…



――――――――――――――――――――――――――――――――

「不安なんだよ…」

呟かれた言葉。
それはとても小さな声で、ともすれば聞き逃してしまいそうな程の…

「何がだい?」
「え?…」

恐らく、今の言葉は自分でも知らないうちに口をついて出たモノだったのだろう。
そう問われて、腕の中で伏せていた顔を何とも言い様のない表情を浮かべて上げる。

「何が不安なんだい鳴滝くん」
「…っあ…別に…僕は」

ちょっとの間を置いた後、
自分が発した言葉に思い当ったのだろう、そのまま表情を困惑したようなモノに変えて、
また伏せてしまう。

「鳴滝くん?」
「な…でも・な…っ・・シャワー…浴びてくる…」

そう云うと、
まるで逃げるかの様に腕の中からその身を引き離し、
そのまま顔を見せない様にしてバスルームの中に入っていってしまった。
少しすると、中からはシャワーを使う水音が聞こえてくる…。

「……」
(鳴滝くんにしては随分と…)

その、『らしく』ない態度が気になった。
何時も…視線が合っている時はもちろん、
例え、その視線が別のモノを、別の感情を見ていたとしても、
決してその瞳の中の光が消える事が無いと確信出来るハズの鳴滝くんの瞳が、
確かに揺らいでいた。
それは、『今』みたいな時間を過ごしているからなどという理由などではないハズなのだ。
今まで幾度となく『約束』の時間を過ごして来た過去の時間の中の何処にも、
あんな瞳をした鳴滝くんを見る事は無かった。

『罠』にかけた瞬間も、『罠』に捕らえ落とし入れた時も、

恐らく…『感情』が変わった時であっても…。


――――――――――――――――――――――――――――――――

シャワーを浴びていても、少しも気持ちが落ち着かない。
自分でも驚く程酷く動揺しているのが解かる。

「…っ…」

口に出す気なんか無かった。
ずっと、
ずっと…

「僕とした事が…らしく…ないな…」

無意識に発してしまった言葉。
聞かれたと思った瞬間、何故だか涙が出てしまいそうになって、
それを悟られるのが嫌で、逃げる様に君の腕の中から抜け出して来てしまった。

「…変に…思われただろうな…」

でも、あのままだったらきっと、僕は…
本当は、自分でも解からないのだ、一体何が『不安』なのか。

「全然らしくない…らしく…ない…僕は…」

何を求めているんだろうか、
求める『何か』なんてモノがあるんだろうか、
例え…何を求めてもそれは叶えられないのに。

――― 叶えられないのに…―――

「……っふ…」

シャワーから流れ出る熱い流れに身を晒しながら、
その流れの中に、頬をつたう一粒の小さな流れを紛らわせていく。


――――――――――――――――――――――――――――――――


       キヅイテハイケナイ


きっとこのまま…


       カワラナイトオモッテイタノニ


僕は…


       コワイ


僕が…


       キミハ…コワクナイノ…?


怖いよ…
変わらないと思っていたのに、いや…
きっと何も変わらないのに…僕も君も…
でも、
それなのに…


       キモチダケ…


変わりたくない。
これは…
この気持ちは…変わっちゃいけないんだ。


僕が僕である為に。
僕が君といる為に。


君が…僕を見続ける為に…


変わりたくないんだ。


       コノ『キモチ』ダケハ


ズッと、
ズッと…


       ダカラ…




END…




ATOGAKI

何だか…又何やら書いている灰色狼猫です。
うーん…よく解からない物書いてますね私(反省)
これは、以前書いた「罠」の続編…
かもしれないモノです(苦笑)
「かもしれない」と云うのも、
自分でも其処ら辺がよく解からないまま、
只思い付いたままに書いたモノですから…
(何時もの事なんですけど、私が文を書く時は、
只何と無く「こんな感じのモノが書きたいな」
で書いているものですから。)
コレも続きが有る様な…無い様な…
今の所まだ何も考えていないので(汗);;
何時か何か考え付いたらまた書くかも…

それにしても…何だか…
ココの小説って私ONLYですね(^^;)
何時も何時も勝手に送り付けている私の
拙い文をUPして頂いて、有難う御座います。
それから、読んで呉れた方も有難う御座います。
でも…
私が書く文って面白いんでしょうか?(汗)
それが随分と気になる所だったりするのですが…(苦笑)



わーい!!\(≡*≧▽≦*≡)/
またもやル・ブx鳴 小説くれて有難う~~
もう君のお陰でこの『地下室』の品揃えがイイ感じに
なっているのだよ~(笑)
イヤでもマジでさ(≡⌒ ⌒≡)
少なくとも私は好きやで君の書く小説v
(ラブx2なのも、切なチックなのも、痛いヤツでも~~(爆)
 後エ…げふっ げふふん…くす(笑))
いやいや、コッチはいつでも大歓迎だから
ドンドン送ってくれちゃってO.Kさー!!
何なら今度はイラストとか送ってくれても・・・
ってオイ!Σ\(≡>▽<≡)
いやだってさ…君基本的には絵描きだし(笑)
GET=2000,4




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